12.京都での晩年

 京に戻られた親鸞聖人は執筆活動に励まれます。関東時代から書き進めてきた真宗の教えを論じた『顕浄土真実教行証文類(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい)』、いわゆる『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』の完成。教えを分かり易い歌のかたちにした『和讃(わさん)』など、ほとんどの著述がこの時期に行われています。
 ちなみに、真宗門徒がお勤めに使う『正信偈(しょうしんげ)』は、『教行信証』の一節です。

 なお、真宗の枠を越えて愛される『歎異抄(たんにしょう)』は、親鸞聖人ご本人の執筆ではなく、門弟が聖人のお言葉を綴ったものです。有名な次の言葉はこの書に記されています。

善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや
(『歎異抄』聖典p627

「善人でさえ救われるのだから、悪人にあっては言うまでもない。しかし世の人は逆のことを言う。何故か。それは自らを省みる心が至らぬからなのだ。善人として振る舞おうとする心の衣を脱ぎ去ったところに真の自分が見えてくる。己の闇を知る凡夫を悪人というのであり、そのような身こそ阿弥陀如来が憐れみ導きたいと願われているのだ」